7年前に岩手・宮城内陸地震が起きた。4022ガルという史上最大の揺れ(加速度)を記録した地震である。死者行方不明者は23人に達した。
岩手県一関市の国道の祭畤(まつるべ)大橋が飴のようにぐにゃりと曲がって落ちてしまった。また、90キロメートルほど南の仙台市でも室内に積み上げてあった書籍の下敷きになって男性が死亡した。
しかし、被害はそれだけではなかった。この直下型地震はとてつもない大きさの地滑りを引き起こした。その爪痕は今でも残っていて、いまでも立入禁止になっている。
その地滑りは幅900メートル、長さ1300メートルもあった。東京でいえば東京駅から新橋までの全部が滑ったことになる。
滑った土砂の体積は東京ドーム54杯分にもなった。水平距離で300メートル以上も移動してしまった場所もあった。地形が大規模に変わってしまったのだ。
この地滑りは急傾斜のところで起きたのではない。わずか1〜2度と非常になだらかな傾斜の「すべり面」が滑ることによって起きた。車なら気が着かず、歩いていればようやく気がつく程度の傾斜だ。
この「すべり面」は地下に隠れている。かつて火山灰が降り積もった「シルト層」といわれるものだ。この層がすべったことによって、その上に載っていた土砂がすべてすべってしまったのである。
ちなみにこの地震は、政府の地震調査委員会が発表している地震危険度地図ではまったくノーマークだったところだった。地震予知はかくもあてにならないものなのである。
東北地方だけで幅150メートルを超える大規模な地滑りが起きる可能性がある地形は6万カ所もあることが分かっている。
地滑りを起こすのは地震にはかぎらない。大雨でも各地でたびたび地滑りを起こしてきた。
地球が温暖化すると、気象が「凶暴化」する。台風はいままでよりも強くなり、いままで降らなかった大雨も各地で降るようになる。
この凶暴化のさきがけではないかと思われている大雨のために、2014年夏には広島市安佐南区を中心に大規模な地滑りが起きた。死者74名、住宅の全半壊約250棟という大きな被害を生んてしまった。
2メートル四方の土砂は重さ10トンもある。直撃されれば人も家もひとたまりもない。
地滑り地形は日本全体だと37万ヶ所もある。犠牲者が出るほどの大雨や地震による斜面災害は日本でこれまでは2〜3年に1回は起きてきた。だがこれが、もっと増えるかもしれないのだ。
平地が少ない日本ではそもそも崩れやすい地形が多い。地震はもちろん心配だが、地震だけを警戒していればいいというわけではないのだ。
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