いまからちょうど121年前の1896(明治29)年8月31日、陸羽(りくう)地震が起きた。
マグニチュード (M)は7.2。東北地方で起きた直下型地震としてはM7.2の岩手・宮城内陸地震(2008年)に匹敵する最大級の地震だった。
この地震は秋田県と岩手県の県境にある真昼(まひる)山地で起きた。死者209人のほか、全壊した家屋約6000戸を生み、山崩れは約10000ヶ所にも及んだ。
秋田県仙北郡千屋(現在の美郷町北部)などいくつかの集落では、全戸数の7割以上が全半壊したほどだった。震源地付近では、いまの震度階では震度7から6だったと推定されている。ちなみに1948年の福井地震までは震度7はまだなかった。
なお2008年の岩手・宮城内陸地震は、いままで日本で最大の加速度4022ガルを記録した地震だ。この加速度は世界最大で、ギネスブックの認定を受けている。
この陸羽地震には前震があった。前震とは本震の前に起きる地震のことだ。
本震8日前の8月23日から最大M6.4の地震など、活発な前震活動が続き、その前震で被害が出たほどだ。
ところで、海溝型の大地震である2011年に起きた東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)にも2日前に津波注意報が出るくらいのM7.3の大きな前震があった。2004年のスマトラ島沖地震にも前震があったという説がある。
前震を前震として見分けることが出来れば、これからもっと大きな本震が来るということが分かるはずだ。
このために、前震の「b値」が一般の地震とは違うのではないかという研究が行われてきた。b値とは、あるグループの中の大きな地震と小さな地震の割合だ。いくつもの前震が起きてくれれば、b値が計算できる。
M9.3のスマトラ島沖地震 やM9.0の東日本大震など大地震の発生に先だって数年以上前からb値が低下した、つまり小さい地震が相対的に少なくなったとの報告がある。いずれの例でも、b値は本震のあとは正常に戻った。
だが、この研究を実用化するためには大きな問題が残っている。前震があった地震がそもそも少ないうえ、前震群の地震の数が少なすぎて、統計学的に十分の信頼性が得られないことだ。もちろん陸羽地震のときには、地震の観測能力が低くて分からなかった。
他方、気になることがある。2003年の十勝沖地震だけは、本震と考えられたM8.0の地震以降もb値が低いままの状態が続いているのだ。この地震は北海道の太平洋岸沖に起きた。
これが何を意味するものかは分からない。もしかしたら、今後、ここに巨大地震が発生する可能性があることを示唆しているのかもしれない。
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