島村英紀『夕刊フジ』 2017年3月31日(金曜)5面。コラムその192「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

北朝鮮のミサイルが着弾した場所
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「北朝鮮のミサイルが着弾した場所 日本海が生まれたナゾはいまだ分からず」

 北朝鮮が日本海に向けて多くのミサイルを撃ってきている。3月には同時発射した4発のミサイルのうち、1発がこれまでで最も日本本土に近い能登半島北方約200キロの海上に着弾した。

 ここは日本の排他的経済水域である大和堆(やまとたい)の上である。排他的経済水域とは沿岸から200海里(約370キロ)以内をいう。

 大和堆は日本海の真ん中に突き出した浅瀬で、暖流と寒流が交わっていることもあり、有数の漁場となっている。今度もイカのシーズンであった。そのほか多くの魚種の底引き網漁なども行われている。

 大和堆の面積は北海道ほどもある。北東から南西方向に延びる深い谷で二つに分かれていて、日本に近い側を大和堆、遠い側が北大和堆で、こちらは日本の排他的経済水域ではない。

 日本海はかつては全体が深い海だと思われていた。その真ん中に大和堆があるのが発見されたのは1924年。水産講習所(現在の東京海洋大学)の調査船によるもので、その後の1926年に海軍水路部によって精密測量が行われて大和堆と命名された。まわりは3500メートルもあるのに、最も浅いところが水深236メートルしかない。

 じつは、この大和堆は日本列島の兄弟である。

 約2000万年前にユーラシア大陸の東の端にひび割れが走り、海が流れ込んで幅が狭い日本海が生まれた。このことによって日本列島が誕生し、その後、日本海がどんどん大きくなっていまの日本列島になった。

 そのときに、大陸から一緒に分かれたものの、途中で取り残されてしまったのが大和堆なのだ。北海道の西方沖に武蔵堆という浅瀬がある。大和堆と武蔵堆の二つは大陸の「端切れ」なのである。

 じつは、どうして、なぜ日本海が生まれたかはいまだにナゾなのだ。

 ところで、ニュージーランドは日本なみの小さな国だ。だが、最近、ニュージーランドは未知の大陸の一部が顔を出している大陸の一部だという新しい学説が出た。7つとされてきた世界の大陸に、新たに8つ目が加わるかもしれない。

 この大陸「ジーランディア」は面積約500万平方キロメートル。インド亜大陸よりも大きい。だが全体の94%が水中にあり、ニュージーランドとニューカレドニアだけが海面上にある。

 この大陸は地質学上、独立していて、地質、地殻などの条件が他の大陸に適用されている全ての基準を満たしているという。たとえば地殻は、大陸地殻の典型的な特徴を持っている。他方、海面より下にあることは大陸と定義できない理由にはならない。たとえば南極大陸に氷がなかったら、その西側の大半は水中に沈んでしまうからだ。

 この「ジーランディア」は、大昔にあった超大陸ゴンドワナの一部だったが、約1億年前に分裂したひとつではないかと考えられている。

 これから研究が進めば、大陸の分裂についての知識が増えるだろう。

 日本列島がどうやって、なぜ、出来たかを知ることにも大いに関係するはずなのだ。

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