島村英紀著『地震と火山の島国−−極北アイスランドで考えたこと』
(岩波書店「ジュニア新書」#369、780円。 2001年3月19日発行)
その後絶版になっていましたが、2019年はジュニア新書創刊40年で、復刊が出ました(8版)。記念の年の書店などへの展開をしています。なお、860円になりました。

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この本についての書評や読者の反響

『地震と火山の島国--極北アイスランドで考えたこと』大阪府立中央図書館(電話:06-6745-0170)で視覚障害者や重度肢体不自由者、高齢者などのための「録音図書ネットワーク配信事業(
DAISY図書。福祉型Web図書館システム)」実証実験として公開。(この実験は、その後、「録音図書ネットワーク配信サービス(びぶりおネット)として、2004年4月から開始されました。詳しくは日本点字図書館、または日本ライトハウス盲人情報文化センターまで)

2008年7月25日(金曜)朝日新聞「Do科学」面に、小川真理子氏(科学読物研究会)によって、中学生向きの科学の本として推薦されました。一緒に推薦された他の本は、それぞれ2002, 2005, 2006年に初版が出た本でしたから、この数年間に出た「古典」として推薦されたものでしょうか。

 2005年秋、国会図書館国際子ども図書館の「学校図書館貸し出し」の北欧の部のリストに選ばれました。

 2004年春、法政大学法学部の入試に使われました。


 2003年春、順天中学校の国語入試に使われました。ちなみに第2題は宮本輝。

2002年5月、『地震と火山の島国--極北アイスランドで考えたこと』が産経児童出版文化賞を受賞しました (なお、岩波ジュニア新書としては3回目の受賞だそうで、この他に産経児童出版文化賞の「推薦」作品がジュニア新書で8点あったそうです)。

 『地震と火山の島国』が2002年2月に雑誌『地理』(47巻2号)に浅川俊夫先生(当時、埼玉県立浦和高校、2006年現在は文部科学省の教育課程審議官)によって好意的に紹介されました。

『地震と火山の島国』が2001年4月22日に朝日新聞の書評面に紹介されました。

また
2001年4月29日には毎日新聞の書評面にも紹介されました。

また2001年5月27日には「しんぶん赤旗」の書評面にも紹介されました。

また柴田鐵治さんによって、電気新聞の書評面に好意的に紹介されたほか、いろいろな書評が出ました。

2001年7月1日、第34回全国学校図書館協議会(SLA)選定「夏休みの本(緑陰図書)」(高校生向き)に選ばれた(中学生向き8冊、高校生向き8冊)。2001年7月1日、『としょかん通信』中高校生版7月号。全国SLA写真ニュース(ポスター)に表紙写真付きで「心に響く、夏の一冊」。なおSLAは社団法人。8冊はすべて違う出版社の出版で、岩波書店の本はこの本だけだった。

2001年10月22日:「2001年(平成13年)度厚生労働省の社会保障審議会児童福祉文化財推薦」に選ばれました(福祉文化分科会(出版物委員会) 推薦)


日経サイエンスに短い紹介が載りました(新刊ガイド、2001年6月号、115頁)

ノルウェー在住の日本人画家がコラムで取り上げてくださいました。

 この本は2002年8月5日現在、全国で96の大学図書館に置いてあります。そのリストは

このほかにもインターネット上の書評があります

Amazon書籍販売へのリンク(この本の投稿書評があります)

この本の中のモノクロ写真をカラーで見てみれば。

この本を買って下さった方へ(追加や訂正:読んでくださる方へ)

 アイスランドの巨大温水プールについての文章を追加(2009年1月)。

『地震と火山の島国−−極北アイスランドで考えたこと』の前書き】

 同じ国を二度三度と訪問しているうちに、だんだんその国が好きになることがあ る。この国がそうだった。

 この国の首都には一本のメインストリートしかない。そして、そこで出会った人々は、知らない人どうしでも、おたがいににっこりあいさつをして行きかうのである。

 もちろん、相手が外国人でも同じあいさつをしてくれる。相手が男でも女でも同じ ようにあいさつをしていく。こちらが男で相手が女性の場合には、自分に気があるのではないかとドギマギするくらい、この国の女性は愛くるしくて美しいあいさつをし てくれるのだ。

 もちろん、こちらもあいさつを返すべきなのだ。私も、はじめはぎくしゃくしていたものの、何日かたつと、人と目を合わせたときには、にこやかにあ いさつを返すことがあたりまえになった。なれるとこれはとてもいい習慣だ。とても なごやかな気持ちになれる。

 ところが、私は日本に帰ったあとでなんとも困った体験をすることになった。いつもやってきたように道で出会った見ず知らずの女性にあ いさつをしてしまって、へんな顔をされたのである。なぜそんな顔をされるのかわか らなかったから、きょとんとした顔をしていたにちがいない。そうだ、ここは日本だったのだ。奇妙な人だと思われてしまったことに気がついて、なんともきまりの悪い思いをしたのである。

 私がいままでに訪れた国の数は四〇ほどになる。私は地球物理を専門とする学者だ から、ほかの学問をしている学者と同じように、学会や研究の打ち合わせで行った国 もいくつかある。

  しかし、私の場合は、この四〇か国のほとんどは、地球で何かの事件が起きている現場なのである。その事件とは、地震だったり、火山の噴火だったり、プレートが生まれることだったり、またプレートが地球の上から姿を消すことだったりする。あちこちの国に行って、そこで地球に起きている事件を研究することが 私の仕事なのである。

 この国は世界でもっとも北にある、とても小さな国である。ひとつの小さな島がひとつの国になっている。地球を研究している科学者である私からみれば、この島は海底の火山がたまたま海の上に顔を出したという、とくべつのなりたちをもっている。

 私が研究していることは、この小さな国の大地のなりたちである。この国のあちこちでは、火山が噴火したり、新しい地形が作られたりしているから、地球がどんなエネルギーを出しているかを目の前で見ることができる。世界でもこの国にしか見られ ないものがたくさんあるのだ。この国が乗っている島が地球の歴史の中でどのようにできたのか、それが私がこの国を訪れている理由なのだ。

 研究のためには、まずデータを集める観測をしなければならない。いろいろな観測器を現場に持っていって、陸上や海底にすえつけて、そこでの地球の事件を調べる。 これは聴診器を持った医者が体の中を探ることにそっくりである。

 十分なデータを集めるためには、一度だけその国を訪問すれば終わるものではないことが多い。このため、同じ国に何度も行くことが多い。また、私の研究は陸でも海でも、研究の現場に行って、そこで機械を使って観測をしなければならないものだか ら、現地の人に協力してもらったり、いっしょに船に乗ってもらったりすることが必要になる。つまり研究をしているうちに、その国の自然だけではなくて、その国の社会や人の暮らしも、しだいに見えてくるのである。

 みなさんは、日本は小さな国だと思っているだろうか。それとも大国だと思ってい るのだろうか。面積では、日本は世界でも小さな国に入る。しかし人口の多さでは、 日本は世界で八つしかない人口が一億人をこえる国に入るのだ。また、作っている自 動車や電気製品の数は世界でも有数の国だろう。つまり日本は小さくもあり、大きく もある不思議な国なのだ。

 しかし、この国はどんな見方をしても小さな国だ。こんな国が、いったいどうやっ てなりたっているのか、人々はどんな暮らしをしているのか、想像もつかないかもしれない。

 世界には暑い国も寒い国もある。雨の多い国もあれば、雨がほとんど降ら ない国もある。雪の多い国もある。どの国でも、自然が許してくれる条件のもとで、 自然が与えてくれる恩恵を生かしながら、人々はそれぞれの暮らしを組み立ててきたのである。

 この島の自然はきびしい。島のなりたちのせいで、ここには息をのむような美しい雪山や氷河の景色がある一方で、作物を作るために必要な土がほとんどない。自然災害も多い。気候も日本よりもずっと寒い。しかし私が感心したことがある。この国の人々がたいへんな 努力をした結果、豊かで暮らしやすい国を作りあげることに成功したことだ。

 この本ではまず、この火山島が地球の歴史の中で、もともとどのように生まれたのか ということをお話ししよう。そして、島の自然とともに生きてき人々が、力を合わせてどんな国を作りあげてきたのかについても、お話ししていこう。

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