島村英紀の裁判通信・その24
(2007年1月31日に配信)

(判決の「素晴らしい」記事。2007年1月


<編集部からの説明>
新聞がどれほど「素晴らしい」記事を書いてくれたか、判決前後に集めた記事をまとめました。

「いまさら」かもしれませんが、「裁判通信」の読者の方々にはおわかりの事実が、どのように無視され曲げられて報道されたか、いつかチェックする資料と考えました。

ただし昨年2月1日の「逮捕記事」と読み比べると、わずかに変化していることもわかります。

「だからなんなの?」といわれたら、一言もありません。でもせっかく集めた資料ですので、捨て切れませんでした。

最後の最後になって次々と放り込んで申し訳ありません。これを含めて、あと3回、ご辛抱ください。
<編集部>

判決直前の記事
●北海道新聞 07/1/11
地震計の所有権が争点 島村元北大教授あす判決 詐欺事件公判

 共同研究相手のノルウェーの大学教授から海底地震計の売却代金として二千万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元北大地震火山研究観測センター長(教授)、島村英紀被告(65)の判決公判が十二日、札幌地裁(井口実裁判長)で開かれる。検察側の懲役四年の求刑に対し島村被告は無罪を主張しており、判決が注目される。

 検察側は海底地震計を北大所有の国有財産と断定し、「島村被告に売却権限がないのに売却した」と主張。島村被告が二○○五年一月、ノルウェー・ベルゲン大の教授に対し金銭の授受について北大側に明かさないよう求める電子メールを送った行動を「隠ぺい工作」と指摘し、犯意を裏付ける有力証拠とした。

 これに対し、弁護側は海底地震計の所有権は、開発者の島村被告にあると主張。さらに、地震計の売買はなく、「島村被告と共同研究を行う時に限り、ベルゲン大に地震計の使用を許す契約だった」と反論している。

 無罪主張の一方で、島村被告は公判中、ノルウェー側からの二千万円を自らの口座に入金した点について「手続き上の問題はある」と一部で非を認めた。昨年十月には、北大が島村被告に二千万円の返還を求めた民事訴訟で和解、北大に千八百五十万円を支払った。  島村被告は海底地震研究の世界的権威として知られていた。昨年十一月の最終意見陳述では「事件で研究を続けられなくなって残念」と述べた。既に保釈されており、周囲によると、研究への意欲は衰えていないという。

北大海底地震計詐欺事件
北大が2005年4月、共同研究相手のノルウェー・ベルゲン大学に北大の承諾なく海底地震計5台を売却し、代金を北大に納めなかったとして、島村英紀被告を業務上横領の疑いで札幌地検に告訴。島村英紀の個人口座に振り込まれた2千万円について、個人流用が認められなかったことから、同地検は昨年2月、詐欺容疑で島村被告を逮捕、起訴した。詐欺罪での立件により、被害者は北大から、ベルゲン大学教授に変わった。

主な争点
1 海底地震計の所有権

(検察) 北大が国費で購入した部品で構成された国有財産。島村被告は自らに売却権限がないことも熟知していた。

(弁護) 海底地震計の価値は部品の総額を大幅に上回り、所有権は開発者の島村被告にある。

2 200万円の受領理由

(検察) 共同研究費用のほかに支払われており、売買代金以外にあり得ない。

(弁護) 金銭は地震計の研究資金で、北大に入れる義務はない。

3 詐欺行為の認識

(検察) 海底地震計の売却権限があるように装い、北大に金銭を納める意思もないのに売却を伝え、ベルゲン大側を欺いた。

(弁護) ベルゲン大教授は「だまされたとは思っていない」と明言しており、被害申告もしていない。詐欺罪は成立しない。

判決後の「素晴らしい」記事
●北海道新聞 2007/01/12
北大地震計詐欺 島村被告に有罪判決 所有権認めず 札幌地裁 

 共同研究相手のノルウェーの大学教授から、海底地震計の売却代金二千万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元北大地震火山研究観測センター長(教授)、島村英紀被告(65)=東京都練馬区=の判決公判が十二日、札幌地裁で開かれ、井口実裁判長は島村被告に懲役三年、執行猶予四年(求刑・懲役四年)を言い渡した。

 起訴状によると、島村被告は一九九八年から九九年にかけ、北大所有の海底地震計の売却権限がないのに、ノルウェーのベルゲン大教授に地震計五台を売却。代金二千万円を自らの口座に入金させ、だまし取った。

 検察側は「ベルゲン大教授に口止めを求める電子メールを送信し、証拠隠滅を図ろうとした」と島村被告を厳しく批判し懲役四年を求刑した。

 これに対し、弁護側は地震計の所有権は北大ではなく、海底地震研究の権威として、地震計の開発を進めてきた島村被告にあると主張。「ベルゲン大教授には、だまされたという認識はない」と無罪を主張していた。

 島村被告側は自らの口座に二千万円が振り込まれた点を「手続き上問題はある」と認め、北大が二千万円の返還を求めた民事訴訟で千八百五十万円を支払い、和解している。  この事件では、北大が二○○五年四月、業務上横領の疑いで島村被告を告訴。検察側は島村被告による金銭の個人流用がなかったことなどから、昨年二月、詐欺容疑で逮捕、起訴した。このため被害者は北大からベルゲン大教授に変わった。

 島村被告は北大を退官する直前の○四年、国立極地研究所長(東京)に就任したが、北大からの告訴直後に退職した。

●朝日新聞 北海道 07/1/12
大学の海底地震計を売却 元北大教授に有罪 札幌地裁

 前国立極地研究所所長で元北海道大学教授の島村英紀被告(65)が、大学の所有する海底地震計を売却して個人で現金を受け取ったとして詐欺罪に問われた裁判の判決公判が12日、札幌地裁であった。井口実裁判長は、懲役3年執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。

 起訴状によると、島村被告は98年9月?99年5月、北大の海底地震計5台と関連機器1台を権限がないのにあるように装って売却し、ノルウェーのベルゲン大教授から計約2千万円を自分の口座に振り込ませ、だまし取ったとされる。同被告は「地震計は開発者の自分に所有権がある」などと無罪を主張していた。

●毎日新聞 北海道 07/1/12
裁判:地震計売却の元北大教授に詐欺罪で懲役3年、執行猶予4年

 北海道大・地震火山研究観測センターに在職中、大学(国)に所有権がある海底地震計をノルウェーの大学教授に売却し、代金約2000万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元同センター長で前国立極地研究所所長、島村英紀被告(65)=東京都練馬区=の判決公判が12日、札幌地裁であった。井口実裁判長は懲役3年・執行猶予4年(求刑・懲役4年)を言い渡した。島村被告は「売買ではない」として無罪を主張していた。

 起訴状によると、島村被告は98年9月ごろ、海底地震の共同研究をしていたノルウェー・ベルゲン大の男性教授に国有の海底地震計4セットと付属機器を売ると持ちかけ、約1650万円を個人口座に振り込ませた。99年8月にも地震計1セットの代金約375万円を振り込ませた。

 機器はノルウェー側に渡ったが、検察側は島村被告は機器を売却する権限がないのにあるように相手側に信じ込ませ、代金を得た点で詐欺罪が成立すると主張した。

 これに対し、弁護側は(1)ノルウェー側との契約は売買ではなく、地震計を保管・使用させる内容で、保管場所を決める権限は島村被告にあった(2)振り込まれた金は代金ではなく研究資金(3)ノルウェー側に被害認識はない??などと詐欺罪の不成立を主張。

 仮に実質的な売買だったとしても、「加工物の価格が材料代を著しく上回る場合、加工者が所有権を持つ」とする民法の規定を根拠に「地震計の所有権は機器を加工した島村被告にあると考えられる」とも補足した。

 事件は、北大が05年4月に札幌地検に業務上横領容疑で告訴したのが端緒となり、同地検が06年2月に島村被告を詐欺容疑で逮捕、起訴した。売買代金返還を求めて北大が05年8月に起こした損害賠償訴訟は島村被告が1850万円の和解金を支払うことで06年10月に和解が成立。弁護側は支払いに応じた理由について「受領した金が趣旨通り研究に活用される道を開くため」と説明している。【真野森作】

●読売新聞 07/1/12
地震計を勝手に売却、詐欺の元北大教授に有罪判決

 国立極地研究所前所長の元北海道大教授、島村英紀被告(65)が北大在職中、海底地震計をノルウェー・ベルゲン大教授(44)に勝手に売却したとして、詐欺罪に問われた事件の判決が12日、札幌地裁であり、井口実裁判長は「地震計は北大の国有財産であり、被告には売却権限がなかった。詐欺罪の成立は明らか」と述べて、懲役3年、執行猶予4年(求刑・懲役4年)を言い渡した。

 起訴状などによると、島村被告は北大地震火山研究観測センター長だった1998年9月から99年5月にかけ、研究のためノルウェーに持ち込んでいた北大所有の海底地震計5組を、自分に売却権限があるように偽ってベルゲン大教授に譲渡。教授から代金として計約2030万円を個人口座に振り込ませてだまし取った。ベルゲン大教授は代金が北大に渡ると認識していたが、島村被告が生活費などに使った。

 島村被告は、海底地震観測の第一人者として知られ、3000トンの水圧にも耐える海底地震計の開発に中心的な役割を果たした。海外学者との共同研究も多く、ベルゲン大とも87年ごろから共同観測を行い、成果を上げていた。

 島村被告は、「地震計は、北大所有ではない」などとして無罪を主張したが、証人出廷したベ大教授は「口座が島村教授個人のものとは知らなかった」と証言していた。


(2007年1月12日20時16分 読売新聞のネット版では)
北大の地震計勝手に売り飛ばす、島村元教授に有罪判決

 北海道大所有の海底地震計をノルウェー・ベルゲン大教授(44)に勝手に売却し、代金計約2030万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた国立極地研究所前所長の元北大教授、島村英紀被告(65)の判決が12日、札幌地裁であった。

 井口実裁判長は「詐欺罪の成立は明らか」として懲役3年、執行猶予4年(求刑・懲役4年)を言い渡した。

 判決によると、島村被告は北大地震火山研究観測センター長だった1998年9月から99年5月にかけ、研究のためノルウェーに持ち込んでいた北大所有の地震計5組を、自分に売却権限があるように偽って譲渡し、代金計約2030万円を個人口座に振り込ませてだまし取った。

 島村被告は「地震計は、北大所有ではない」などとして無罪を主張していたが、井口裁判長は「地震計は国有財産」と認定。判決では、島村被告が北大に約1850万円を支払い和解したこと、辞職して社会的制裁を受けたことを考慮した。

 島村被告は、海底地震観測の第一人者として知られ、3000トンの水圧にも耐える海底地震計の開発に中心的な役割を果たした。海外学者との共同研究も多く、ベルゲン大とも87年ごろから共同観測を行い、成果を上げていた。

 島村被告は、判決後「不本意で不当な判決だが、(執行猶予なので)弁護士と相談して控訴するかどうか決めたい」と話した。


●読売新聞 修正版 07/1/13
北大元教授に有罪 海底地震計巡る詐欺 
■北大元教授に有罪/札幌地裁

 ノルウェーのベルゲン大学から海底地震計の代金名目で現金をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた前国立極地研究所所長で元北海道大教授の島村英紀被告(65)の判決公判が12日、札幌地裁であった。井口実裁判長は「地震計は大学が管理する国有財産であり、詐欺罪が成立するのは明らか」とし、懲役3年執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。

 公判で島村被告は「地震計は長年の研究成果として開発したもので、開発者の自分に所有権がある」などと無罪を主張していた。

 しかし、判決は「地震計の部品はすべて大学の公金で購入されたものであり、被告人の所有物とならないことは明白」と指摘。さらに、同被告の「売却は、ベルゲン大教授の要請に応じた契約で同教授をだましたことはない」との主張も、同教授の証言などから「到底信用できない」とした。

 判決によると、島村被告は98年9月?99年5月、北大の海底地震計5台と関連機器1台について、権限がないのにあるように装って売却。ベルゲン大教授から計約2千万円を自分の口座に振り込ませた。島村被告は判決後、「不当な判決。こちら側の論点が認められず不満だ」と話した。控訴については、弁護人と相談して決めるという。


●熊本日々新聞 07/1/12
島村元北大教授に有罪 地震計売却詐欺で札幌地裁

 北海道大の備品だった地震計を売却すると偽りノルウェーの大学から約2000万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元北大教授島村英紀被告(65)の判決公判で、札幌地裁(井口実裁判長)は12日、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。

 地震計の所有権が争点で、弁護側は開発者の島村被告側に所有権があり、詐欺罪は成立しないと無罪を主張していた。

 判決によると、島村被告は北大地震火山研究観測センター長だった1998年9月と99年5月の2回、共同研究をしていたノルウェーのベルゲン大に対し、北大の地震計5台などを売却すると偽り、代金計約2020万円を個人の銀行口座に振り込ませ、だまし取った。(共同)
●西日本新聞 07/1/12
島村元北大教授に有罪 地震計売却詐欺で札幌地裁

 北海道大の備品だった地震計を売却すると偽りノルウェーの大学から約2000万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元北大教授島村英紀被告(65)の判決公判で、札幌地裁(井口実裁判長)は12日、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。

 地震計の所有権が争点で、弁護側は開発者の島村被告側に所有権があり、詐欺罪は成立しないと無罪を主張していた。

 判決によると、島村被告は北大地震火山研究観測センター長だった1998年9月と99年5月の2回、共同研究をしていたノルウェーのベルゲン大に対し、北大の地震計5台などを売却すると偽り、代金計約2020万円を個人の銀行口座に振り込ませ、だまし取った。(共同)

●東京新聞 07/1/12
島村元北大教授に有罪  地震計売却詐欺で札幌地裁

 北海道大の備品だった地震計を売却すると偽りノルウェーの大学から約2000万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元北大教授島村英紀被告(65)の判決公判で、札幌地裁(井口実裁判長)は12日、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。

 地震計の所有権が争点で、弁護側は開発者の島村被告側に所有権があり、詐欺罪は成立しないと無罪を主張していた。

 判決によると、島村被告は北大地震火山研究観測センター長だった1998年9月と99年5月の2回、共同研究をしていたノルウェーのベルゲン大に対し、北大の地震計5台などを売却すると偽り、代金計約2020万円を個人の銀行口座に振り込ませ、だまし取った。(共同)

●NHK 07/1/12
地震計詐欺 元北大教授に有罪

海底地震研究の権威として知られる北海道大学の元教授が大学の地震計を売却すると偽って外国の大学から2000万円余りをだまし取ったとされる事件で、札幌地方裁判所は「教授の信用を悪用した悪質な犯行だ」として有罪判決を言い渡しました。

●札幌テレビ 07/1/12

地震計は、いったい誰のものだったのでしょうか? 北大の元教授が地震計を売却すると偽り2000万円を騙し取ったとした詐欺事件の裁判で、札幌地方裁判所は地震計は北大のモノだと認定し、元教授に有罪判決を言い渡しました。

判決を受けたのは北海道大学の元教授・島村英紀被告です。島村被告は北大の地震火山研究観測センター長をしていた98年と99年に権限がないのに、北大が管理する海底地震計5台などをノルウェーの大学に売却するといつわり自分の口座におよそ2000万円を振り込ませたとして詐欺の罪に問われていました。

この裁判で島村被告は、地震計は北大の管理する財産ではないと無罪を主張していました。判決で札幌地裁は、関係者の証言から地震計は北大のモノだとして島村被告の詐欺罪を認定し、島村被告に懲役3年執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。

(島村英紀被告) (不当な判決だと思いますか?) 「そう思います」

島村被告は控訴するか、弁護士と相談するということです。

(2007年1月12日(金)「どさんこワイド180」)

●北海道新聞 07/01/13
島村元教授有罪 「地震計売却権限ない」 控訴、弁護士と協議

 共同研究相手のノルウェーの大学教授から、海底地震計の売却代金二千万円をだまし取ったとして、十二日、札幌地裁で懲役三年、執行猶予四年(求刑・懲役四年)の有罪判決を受けた元北大地震火山研究観測センター長(教授)、島村英紀被告(65)=東京都練馬区=は、同日午後、判決に対して「不当で、不本意な判決。控訴するかどうかは弁護士と打ち合わせて決めたい」と語った。

 判決で井口実裁判長は争点だった海底地震計の所有権について「海底地震計は北大管理の国有財産で、島村被告に売却権限はなく、詐欺罪の成立は明らか」と指摘、検察側の主張を認めた。

 一方で井口裁判長は、島村被告が北大から二千万円の返還を求められた民事訴訟で、千八百五十万円を支払い和解した点などを考慮し、執行猶予つきの判決とした。
 判決によると、島村被告は一九九八年から九九年にかけ、北大所有の海底地震計を売却する権限がないのに、地震計五台をノルウェーのベルゲン大教授に売却。代金二千万円を自らの口座に入金させ、だまし取った。

 島村被告は、海底地震計の所有権は開発者の自分にあるなどとして、無罪を主張していた。

 判決に対し、札幌地検の長崎誠次席検事は「主張通りの認定で、極めて妥当な判決」と述べた。北大の逸見勝亮(へんみまさあき)副学長は「裁判所が適切な判断をされたと認識している」とコメント。

 ベルゲン大のロルフ・ミエルデ教授(44)は北海道新聞の電話取材に対して「島村被告とは良い関係を築いてきたので、有罪判決はとても残念」と述べた。

●毎日新聞 北海道朝刊 07/1/13
極地研前所長詐取:有罪の島村被告「不本意な判決」

 北海道大に在職中、大学所有の海底地震計をノルウェーの大学に勝手に売却し、代金をだまし取ったとして詐欺罪に問われた前国立極地研究所所長、島村英紀被告(65)に対し、札幌地裁は12日、懲役3年・執行猶予4年(求刑・懲役4年)の有罪判決を言い渡した。無罪を主張していた島村被告は判決後、「判断してほしい論点をきちんと評価してもらえず、不本意で不当な判決。控訴するか弁護士と検討する」と述べた。

 札幌地検の長崎誠・次席検事は「金銭を返還して実害がないことを考えると執行猶予もやむをえない」と語った。北大の逸見勝亮副学長は「適切な判断が出された」とコメントした。【真野森作】

●北海道新聞 社説 07/1/14
地震計詐欺*問われた研究者の倫理

 世界的に有名な地球物理学の研究者が、詐欺罪に問われ、札幌地裁で有罪判決を受けた。

 大学の規則を無視する形で行われた不透明な会計処理が、事件の温床になった。

 研究者のモラルの低下には落胆を禁じえない。ほかの研究者は、今回の判決を「他山の石」とし、あらためて襟を正す必要があろう。

 事件の舞台となった北大は、組織を挙げて再発防止策を徹底する必要がある。

 有罪判決を受けたのは、元北大地震火山研究観測センター長(教授)の島村英紀被告(65)だ。判決などによると、島村被告は北大在職中、大学の海底地震計を自分の所有物であるかのように装い、共同研究していたノルウェー・ベルゲン大学側に売却して、代金として約二千万円をだまし取ったという。

 公判では、地震計の所有権が、島村被告と北大のどちらにあるかが最大の争点になった。

 弁護側は、地震計の部品を組み立て、機器を加工した島村被告に所有権があると主張した。 そのうえで、ベルゲン大側から受け取ったのは、売買代金ではなく研究資金だとして無罪を訴えた。

 民法には、「加工物の価格が材料費を著しく上回る場合、加工者が所有権を持つ」という規定がある。

 しかし、判決は、島村被告が部品を組み合わせて製作した地震計については、「著しく価値が上がったとはいえない」と弁護側の主張を退けた。 国費で購入した部品で作られたこの地震計が「国有財産」であると認定した判決は、納得できる内容だ。

 島村被告は、深海の水圧に耐える精密な海底地震計の開発で成果を挙げた。ベルゲン大とは一九八七年ごろから共同観測を行っていた。

 海底地震観測の第一人者として、国際的研究をリードしてきた実績への過剰な自信が、研究者として必要な倫理を見失わせたのではないか。 北大内からは、島村被告の行為は「公の仕事と個人の研究成果を取り違え、独善的だ」との指摘も出ている。

 北大の資金管理そのものにも甘さがあったことは否めない。研究費などの資金の流れを透明化するためには、「第三者」の視点が不可欠だ。

 北大は事件後、教授を頂点とする閉鎖的な地震火山研究観測センターの研究体制を改め、センター以外の部局から幹部職員を配置した。研究者が開発した機器や実験装置、試作品などの「研究の成果」については、北大は独自の管理規則を新たに定め、研究者の私的売却を禁じた。 学内組織を定期的に再点検することも、再発防止には欠かせない。

有罪確定の記事
●北海道新聞 07/1/27
島村被告の有罪確定 地震計詐欺

共同研究相手のノルウェーの大学教授から、海底地震計の売却代金二千万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われ、札幌地裁で懲役三年、執行猶予四年(求刑・懲役四年)の判決を受けた元北大地震火山研究観測センター長(教授)島村英紀被告(65)は二十六日、控訴を断念した。同日で有罪判決が確定した。島村被告は弁護人を通じ、「真実を求めて控訴するのは可能だが、限られた人生を社会活動や研究など、私がやりたいことにささげたいと思う」とコメントした。

●時事通信 07/01/27
島村元教授の有罪確定=地震計売却詐欺 - 北海道

 北海道大の海底地震計を売却すると偽り、ノルウェーの大学から約2000万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われ、札幌地裁で懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役4年)の判決を受けた前国立極地研究所所長で、元北大教授の島村英紀被告(65)は、期限の27日午前零時までに控訴せず、有罪が確定した。

●毎日新聞 07/1/27 北海道朝刊
極地研前所長詐取:北大元教授の有罪が確定へ

 北海道大・地震火山研究観測センターに在職中、大学に所有権がある海底地震計をノルウェーの大学教授に売却し、代金をだまし取ったとして詐欺の罪に問われ、1審で有罪判決を受けた元同センター長で前国立極地研究所所長、島村英紀被告(65)が26日、控訴しないと発表した。検察側も控訴せず、懲役3年・執行猶予4年の札幌地裁判決(12日)が確定する。

参考記事:逮捕直後
参考までに昨年2月、島村逮捕を報じた新聞記事を再録します。どこも似たようなものですが、毎日新聞を代表にしましょう。
<編集部>
●毎日新聞 06/2/1 22時10分
詐欺:北海道大元教授を逮捕、海底地震計の代金だまし取る

 大学同士の売買を装って、ノルウェーの大学から海底地震計の代金名目で現金をだまし取ったとして、札幌地検特別刑事部は1日、北海道大元教授で国立極地研究所前所長の東京都練馬区、無職、島村英紀(ひでき)容疑者(64)を詐欺容疑で逮捕した。

 調べでは、島村容疑者は北大地震火山研究観測センター(札幌市北区)のセンター長だった98年9月ごろと99年5月ごろ、海底地震の共同研究をしていたノルウェー・ベルゲン大学の教授をだまし、地震計5セットと受信機1台の代金計約2000万円を個人名義の銀行口座に振り込ませた疑い。島村容疑者は容疑を否認しているという。詐欺罪の公訴時効は7年だが、海外滞在期間中は停止するため、時効は成立していない。

 島村容疑者は東京大大学院博士課程地球物理学専攻を修了。地震学の第一人者として知られ、98年に同センター長に就任した。04年12月、同極地研究所(東京都板橋区)所長に就いたが、その直後に今回の疑惑が発覚。北大は05年4月、「北大のものである地震計などを勝手に売却した」として、島村容疑者を業務上横領容疑で札幌地検に刑事告訴していた。北大は代金の返却を求める損害賠償請求訴訟も札幌地裁に起こしている。島村教授は告訴を受け同極地研所長を辞任した。

 逮捕を受け、北大の逸見勝亮副学長は「地震研究の分野で有名な人だっただけに残念だが、よくないことをしているのだから逮捕は当然と思う。適正に処分されることを望む。地震計の売却代金の返還も引き続き求めていく」と話した。【真野森作、武内亮】

◇学者への不信強まるのは必至

 島村英紀容疑者は地震学や南極観測に大きく貢献した学者だった。今回は金銭に対する姿勢が問われた事件であり、最近相次ぐ論文ねつ造疑惑と質は異なるが、学者への不信が強まることは必至だ。

 島村容疑者は1970年代末に今の海底地震計の原型を開発、世界初の実用的な地震計と評価された。水深6000メートルの水圧に耐える地震計の製作は容易ではなく、海外の競争相手が断念するなか、「ものづくりが大好き」(本人)という性格が奏功し、10年以上かけて開発にこぎつけた。

 一方、日本の地震予知計画について、「一度も実際の予知に成功していない」と言い切り、反発を受けたこともある。今回の事件は、北大へ寄せられた内部告発が端緒だが、こうした関係者の不満が告発を招いたという声もある。

 研究分野では不祥事が相次いでいる。韓国・ソウル大教授は論文をねつ造し、東京大教授は論文の真実性を当事者が期限内に証明できなかった。これらは生命科学という、国際競争が激しく一刻も早い研究費を得たいとする分野で発生した。

 これに対し、地震学は継続的な観測が求められる比較的地味な分野だ。また、「個人口座への入金は常識を逸脱している」(別の大学の会計担当者)と言われ、個人の資質によるところが大きい。

日本は資源が乏しく、科学技術が国を支える。研究者に対する期待は大きく、資金の扱いを含め倫理観を高めることが改めて求められる。【田中泰義】

<追加資料:地震学会の掲載削除記事>
新聞記事ではありませんが、昨年2月3日に早々と「遺憾表明」を出した日本地震学会が、4月になって下記の「掲載削除」記事を出していることに気づきました。

読者の一人である方の強硬な抗議によるものと推察します。感謝とともに、日本地震学会の右往左往ぶりがわかる記事も紹介します。
<編集部>
会員の皆様へ HP声明掲載終了について  2006年4月3日
社団法人 日本地震学会理事会

 去る2月1日の島村英紀代議員の逮捕を受けて,理事会ではMLでの議論を通じて,直ちに学会内外に対してコメントすべきであると判断し,2月3日に地震学会HPに遺憾の意を掲載しました.また,2月21日の起訴を受けて,同会員の代議員資格停止の方向をMLで検討しましたが,定款に規定のない措置を取ることになるという理由で,この方向は取り下げることにしました.

 その間,会員の方々から,HPに声明を出した行為,およびその文面に対する色々なご意見をいただきましたが,理事会としては,逮捕・起訴を受けて学会として何らかのアクションを起こす必要があると判断して行動してきた次第です.

 3月28日に開催された理事会で議論した結果,2ケ月間のHP掲載によって遺憾の意を学会内外に示すという当初の目的は達成したとの合意に達し,HPでの声明掲載を終了することに決定しました.なお,学会として適切に対処すべく,理事会として今後も事態を見守るとともに,今期理事会で行われた議論は,次期の理事会の参考になるように引き継いでいきたいと思います。

島村英紀の裁判通信」の目次へ
ノンフィクション・島村英紀の家宅捜索・逮捕・連行劇
ノンフィクション・島村英紀の獄中記
海底地震計・海底地震観測とはどのようなものなのだろう
悪妻をもらうと哲学者になれるなら:海底地震学者は「哲学者」になれる
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島村英紀が書いた「もののあわれ」

誰も書かなかった北海道大学
私を支援してくださっている奈和浩子さんのホームページ



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