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今月の写真
「人工呼吸器を使って維持されている」都会の自然
今回は(私が住んでいる)近くの写真です。

私が小学校のころから親しんでいる景色のひとつである。東京都練馬(ねりま)区の西部にある石神井(しゃくじい)公園。ここには二つの池が東西にあるが、そのうち、西側にある三宝寺(さんぽうじ)池の秋景色だ。
この池の水はすぐ東側にある「ボート池」に注いで、石神井川の源流のひとつになっている。石神井川は、その後、東北東に流れて、板橋区、北区を横断し、荒川区と北区の境で、荒川に合流して、最後は東京湾に注いでいる。
なお、私が小学校のころ、つまり1950年代のはじめには、石神井川では、よくシジミ貝がとれた。(石神井の7kmほど下流の)江古田(えこだ)にある同級生の家に遊びに行ったときに、川に入ってシジミを採ったのを覚えている。しかし、そのはるかにあと、私が2004年に同じく下流にある国立極地研究所に勤めたときには、シジミの話は、まわりの誰も、信じてはくれなかった。すべてがコンクリートの護岸で覆われてしまった石神井川は、いまや、都会のどぶ川である。
この三宝寺池のすぐ南には、三宝寺と(武蔵)道場寺という二つの寺がある。左の写真は道場寺の境内の秋景色だ。ここには三重の塔がある。しかし、これは古いものではなく、1974年に建てられたものだ。
関東平野の西部は、緩い東下がりの地形になっている。奥多摩など、西部の山地で地中にしみこんだ水は、海抜50メートルほどの高さのところで、地表に出てきて、同じような池をいくつか作っている。
この三宝寺池のほか、中央線の吉祥寺駅の近くにある井の頭公園の井の頭(いのかしら)池、西武新宿線の東伏見駅の近くにある武蔵関公園の富士見池、杉並区の善福寺公園にある善福寺(ぜんぷくじ)池などだ。
しかし、ご多分にもれず、地下水の減少で、この三宝寺池も、自然の湧き水がなくなってしまった。このため、ここでは、(一般的には地下水の汲み上げは禁止されているのだが)、特別の許可を得て井戸3本を掘り、地下水を汲み上げて、かつての湧き水の代わりをさせている。
その汲み上げ量は、年々増えていて、2008年には、一日に平均4355トンにも達している。じつは、これから建設されようとしている東京外環道は、この三宝寺池のすぐ西側を地下トンネルを掘って通ることになっていて、地下水への影響がいっそう、心配されているのである。
つまり、この写真で見るかぎり、三宝寺池の景色は、桜の春(右の写真)も紅葉の秋(上の3枚の写真)も、半世紀前の私の小学校時代と変わっていない風景なのだが、いまや、この水は電気モーターを使って、人工的に維持されている「人工の風景」になってしまっている、というわけなのである。
この都会のささやかな自然は、いわば、人工呼吸器を使って維持されているのである。
この石神井公園では2007年夏に、はじめて、外来種の動物の捕獲調査が行われた。その結果、カミツキガメ 43匹、ミシシッピアカミミガメ 130匹、ブルーギル 44匹などが捕獲され、一方、在来種のタナゴやクチボソが激減していることが分かった。
その意味でも、ここは昔の自然がなくなりかかっているのだ。
【追記】 2009年3月下旬。暖気が来たあと、季節はずれの冷気に覆われた関東地方では、白いコブシの花と、咲きかけた桜の花が一緒に咲いて、三宝寺池に映えていた(左写真)。
同じく2009年3月下旬。池の隣にある道場寺では、赤と白のぼけ(木瓜)の花が満開だった(右と下の写真)。
ぼけの原産地は中国大陸で、平安時代に日本に入ってきたといわれている。札幌では寒すぎて育たない。高さが1〜2mほどの低木である。花の大きさは2〜3センチほどのものだ
私が子供のころは、武蔵野のあちこちにあった雑木林には、よくこのボケが咲いていた。しかし、いまは雑木林そのものが、ほとんどなくなってしまった。
私も子供のころからぼけの花が好きだが、もっと好きな人が、こんな協会まで作っている。
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左の写真の後ろに写っているのは道場寺の鐘撞堂。
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右の写真は、2009年3月下旬、石神井川の桜。上に書いたように、3面コンクリート張りになってしまった。
桜が咲いていることだけは同じだが、1958年のときとは、まったくの様変わりだ。
しかし、汚染に強い鯉が泳ぎ回っている。大きさは60 cmもある。