今月の写真
「父母二人までの専用入口」がある武道館での「二部制」卒業式

 3月末に、たまたま東京・千代田区にある日本武道館の前を通りかかったら、ある私立大学の卒業式が終わったところだった。午前11時すぎ。終わるにしては早いが、じつはこの卒業式は、近頃の多くの私立大学の卒業式と同じく「二部制」なのである。「二部制」、つまり一回では入りきらないので、学長の挨拶その他、すべて二回繰り返すのだ。ちなみに日本武道館の収容人員は14471人。日本有数の収容人員を誇る大きな会場である。

 マンモス私大ならば、卒業生の数も多いのだろうか。いや、それだけではない。近年は入学式も卒業式も、学生だけということはなく、その父母が出席するのが当たり前になっているからだ。それも、「父母入口」にあった看板では、右の写真にあるように「2名までとさせていただいて」の二部制である。

 たいへんな人数を想定しているのであろう。地下鉄の駅の構内から、警備員が立ってものものしい雰囲気だったし、駅から会場までの間の歩道には、臨時に上り下りを分ける一方通行にするためのナワが張られて、腕章をつけた大学職員が並んでいる。その中に、「東京春闘共闘会議」も混じり、「保存版・働くあなたに贈る権利手帳」(新しく社会にふみだしたあなたに)も配っていた。

 幼稚園や小学校ではあるまいし、大学の卒業式に父母その他の「保護者」が出席する、というのは私の学生時代には考えられなかった。そもそも、私は卒業式に出た覚えもない。

 振り袖姿も目立つ。もちろん借り物だ。自分で着付けは出来ないので、着付け、美容院とセットで振り袖を借りる代金も安くはない。ある大学では、この季節になると学生食堂の一部を仕切って振り袖の展示をはじめる。


 泰平の世の中、というべきなのだろうか。日本の将来は、そう甘くはないのではないだろうか。

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